三つ目は、是非、皆さんの手で世界遺産を作ってくださいということです。ここ数年、入試の合格者に世界遺産のガイドブックを贈呈していますが、その本に次のような文章を添えています。
「この本を選んだ理由は・・・、この本 で紹介されている世界遺産の多くが、私たちが考える理想的な生活環境のモデルにほかならないということです。・・・私たちは建築、都市、土木、環境といっ た学問分野を統合し、二十一世紀的な広い視野を備えた建築家や建設技術者を育てたいと考えています。建物、都市、土木構造物、自然環境が一体となって素晴らしい生活環境を形成しているこれら世界遺産の数々は、文字通り、私たちにとって見習うべき価値ある遺産にほかなりません。この本のページをめくりながら、これからの理想的な生活環境についてイメージしてみてください。私たちはこれからどのような建物や街をつくっていかなければならないのでしょうか。その答えを探すために、皆さんが建築・都市環境学系に入学されることを期待しています。」
世界遺産なんて言うと、ほとんど自分たちとは無関係な遠い存在だと考えてしまいがちですが、実は皆さんがこの大学で学んだこと、それこそが世界遺産のエッセンスなのです。今、まさに卒業しようとしている皆さんは、ここからどうやって世界遺産をつくれるのかということを真剣に考える義務を負っています。もちろん、ひとつの世代だけでは世界遺産はできないかもしれません。しかし、世界遺産をつくるんだという強い気概と、適度な誇大妄想を抱いて、社会で活躍してください。
以上、三つのお願いをもって、卒業・修了にあたっての学系長あいさつとさせてもらいます。みなさん、本日は本当におめでとうございます。
平成二十六年三月十八 建築・都市環境学系 学系長 岩城和哉